従業員数が40名のメーカーを訪問した際、検査部門にカナダ人の女性職員がおられました。品質確認のために外国の公的機関や民間会社から関係者が来日するので、その際の説明や通訳が主な仕事とのことでした。中小企業で外国人を雇用する時に、注意しておかなければならないポイントをご説明します。

専攻職務関連性あること

工学部を卒業した外国人を営業職に就けるとか、IT関連の学科を専攻した学生に経理の仕事をさせるというのは、認められ難いです。ただし、B2Bの場合で、顧客説明の際に専門的な知識が要求される様な営業なら専門知識は不可欠ですし、経理業務の効率化のためのソフト開発という様な場合は可能です。表面上の部署名ではなく、その人に何をさせるのかが大事です。

本人の経歴

学歴要件、実務要件及びIT要件があります。

学歴要件

1.短大・大学・大学院を卒業していること

外国の大学等でも構いませんが、大学なら学士(Bacheler)であることが必要です。卒業証書を確認する必要があります。本人が大学卒と申告していても、文科省の基準に照らして大卒とは認められない場合があります。

「諸外国の教育統計」令和6(2024)年版

2.日本の専門学校を卒業していること

外国の専門学校は対象外です。専門学校の場合、大学卒等よりも専攻と職務との関連性がより厳しくみられる傾向にあります。専門士の称号証明書、履修証明書、成績証明書等を確認して関連性を検証してください。

実務要件

・高卒等で学歴要件を満たせない時は、技術や人文知識であれば、10年以上の実務経験があれば可能です。

・翻訳、通訳、語学の指導をする場合や海外取引業務等の国際業務であれば、3年の実務経験で可能です。大学卒業者が、翻訳、通訳、語学の指導をする場合は実務経験も問われません。ただし、N2レベルを持っていないと厳しいでしょう。

実務要件で鍵になるのは、在職証明書です。前職や前々職あるいは更に遡って実務についていたことを、在籍していた会社に証明してもらう必要があります。前に勤めていた会社が一つか二つで今も健全であれば問題ありませんが、倒産等で勤務していた会社と連絡が取れない様な場合には、実務経験10年が証明できなくなりますので注意が必要です。

IT要件

IT系の仕事に従事する予定の外国人が、IT告知で定める情報処理技術に関する試験に合格しているか、情報処理技術に関する資格を持っていれば、学歴要件も実務要件も問われません。IT告知で定める試験及び資格については、出入国在留管理庁のサイトからご確認ください。
日本の「情報処理安全確保支援士試験」や「情報処理技術者試験」をはじめ、中国、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、台湾、マレーシア、タイ、モンゴル、バングラデシュ、シンガポール、韓国の各国で実施されている情報処理技術系の資格を取得していれば、学歴が無くても、10年の実務経験が無くても、技・人・国として申請できます。

本人の素行

犯罪歴が無い事が条件です。オーバーステイ等分かりやすいものもありますが、以下の様な場合も注意が必要です。
・転職した際、前職の退職届、転職後の就職届を出入国管理局に出していない。→出していなければ、出させてください。出してから申告です。
・前職を退職してから次の就職まで、3か月以上空いている場合。→どうやって生活していたのかを質される可能性があります。貯金があったり仕送りがあれば良いですが、バイト等をしていると、最悪一度帰国してもらいリセットしなければならない場合もあります。

会社側に求められる要件

雇用に関する要件

1.労働契約があること

雇用契約書や労働条件通知書、内定通知書等が必要です。内定を出す等就職が決まっていないと許可が出ません。契約書の名称は様々でも、雇用契約書で必須である項目は網羅させておいてください。(雇用形態、雇用期間、就業場所、従事する業務の内容、就業時間、休憩時間、賃金の決定や計算方法、賃金の支払い方法、退職金の有無等)

2.日本人と同等の給与であること

日本人と同等の給与であることが求められます。外国人であることを理由に安価に使うことは認められません。

経営状態に関する内容

・経営状態が安定していることが求められます。決算書、貸借対照表、損益計算書を提出して会社の健全性を示します。
決算が赤字の場合や新会社で決算未到来の場合(カテゴリー4)は→事業計画書を出します。
債務超過の場合は→公認会計士か中小企業診断士の事業計画書が必要です。

外国人雇用の必要性と業務量の確認

1.必要性の説明

技・人・国を申請する際に提出する書類は多岐にわたりますが、この中の一つに雇用理由書があります。これは、会社の代表者が法務大臣あてに書くのですが、この雇用理由書に、なぜこの人が必要なのかを記述します。定型のフォームがあるわけではないので経営者が感じたことを素直に書けば良いです。例えば以下の様な項目を盛り込みます。
・自社のビジョンを共有してもらえる、
・持っている能力が高い(経歴や資格等から客観的に説明できることが必要)、日本語能力の高さ(N1の認定書等)
・真面目さや誠実さ等経営者が面接した際に感じた本人の資質

2.業務量

土木業の会社に設計を主業務とする外国人を雇用した場合、全ての時間を設計に費やす程の業務量があるのか、と問われることがあります。現業や単純労働に従事させる危険性はないのか?ということです。申請後、入局管理局からスケジュール表を提出する様求められる場合もありますが、先に出してしまった方が無難です。以下の様なものを用意します。

・事務所の中で本人のデスク位置が分かる様な写真(デスク上に、パソコンや電話等業務上必要な備品があること)
・組織図(申請人が組織の中のどの位置にいるのかを示しておく)
・一日単位、一週間単位でのスケジュール表

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