株式会社は資本金1円でも作れます。でも、現実的でしょうか?定款は自由に書けます。でも、原則に則っていないと書き直しになります。社名も自由につけられます。でも、使えない文字や使ってはいけない表示があります。今回はそんな”べからず”集の趣にしてみました。

会社を設立する

べからずその1 合同会社のデメリット

合同会社のメリットは、1.スタートアップ費用が株式会社に比べて安いこと(株式会社が最大24万円かかるのに対し合同会社は10万円)2.出資比率に関わらず1人1票の議決権があること 3.報酬の分配を任意に決められることでしょう。しかし、以下の様なデメリットもあります。設立費用が安いという理由だけではなく、株式会社のメリットも併せて検討しましょう。

会社の定款認証手数料

外国人が会社を設立する時に注意するポイント

パススルー出来ない

合同会社は、当初日本版LLCと目されていました。LLCという言葉が独り歩きして、外国人の中には米国と同じように個人で税金を払えば、法人レベルでは課税されないと思っている人もいるようですが、日本の場合は株式会社同様会社にも課税されます。

上場できない

合同会社は上場できません。上場の必要がある時は、株式会社に変更しなければなりません。

全員が賛成しないと話が進まない

合同会社意思決定は、全員一致が原則です。また、出資比率に関係なく1人1票の議決権を持ちます。少額しか出資していない人でも、その人が反対すれば会社としての決済ができません。1株1票、多数決の原則の株式会社と大きく異なる点です。

合同会社は、コンパクトに設立できるので一人や信頼できる仲間と設立するするには向いていると思いますが、人数を多くすると会社の運営上支障をきたす場面もあります。

べからずその2 非公開会社にならなくなってしまう

株を全て仲間内だけで持合い、非公開会社にしたい場合全ての株式を譲渡制限付き株式にする必要があります。一株でも譲渡制限付き株式がなかったり、1株だけ拒否権付株式を発行する場合でも譲渡制限をつけないと公開会社になってしまいます。

公開会社になると、取締役会が必置になり、会計監査人をつけなければならなくなります。取締役会の設置のためには3人以上の取締役が必要になります。

公開会社では設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下回る事は出来ない、という4倍ルールがありますが、非公開会社の場合はこのルールは適応されません。定款上発行可能株数を10,000株にしても実際の発行は100株という方法もとれます。

べからずその3 社名に関するべからずの数々

株式会社の商号(社名)は定款に必ず記載しなければならない絶対的記載事項ですが、以下の様な”べからず”ルールがあります。

同一の本店所在地において、すでに登録された
商号と同一の商号を登記することはできない
ダメな例 既に上段の会社が登記している時に下段の様な登記はできない
株式会社A 東京都渋谷区渋谷一丁目1番地1号 第3土ビル
株式会社A 東京都渋谷区渋谷一丁目1番地1号 第3土曜ビル2階
可能な例
 イロハ(株)と いろは(株)
 ABC(株)と エービーシー(株)
 伊藤(株)と (株)伊藤
 伊藤(株)と 伊藤合同会社
空白がある。ローレル_ファッション株式会社(ローレルとファッションの間に空白がある)
Cyber Agent株式会社(空白はローマ字を用いる複数の単語を区切る場合に限り使用可)
ギリシャ文字、ローマ数字は使えないレディスⅣ株式会社(ギリシャ文字、ローマ数字は使用不可)
レディス4株式会社
株式会社3110(斎藤)

この他、銀行でもないのに〇〇銀行としたり、トヨタ等有名会社の商号も使用できません。商号の変更には定款変更と変更登記が必要になり費用が伴いますので、社名を決める場合には事前に良く確認して下さい。

使いたい社名が、既に登記済かどうかの相談は、特許情報プラットフォーム(J-Plat Pat) https://www.j-platpat.inpit.go.jp 
で確認できます。

また、付けたい社名が商標登録できるかどうかの相談は、株式会社や合同会社の場合は、法務局登記電話相談室 03-5318-0261か 公証役場でできます。

べからずその4 定款で抜けてはいけない文言集

目的に関する文言

株式会社の場合、公証役場で認証される前に公証人のチェックがあります。この時指導を受けますので、この項はそれほど神経質にならなくてもいいのですが、公証役場をスルーしてしまって、登記の際に法務局で撥ねられる場合もありますので、原則は知っておいてください。定款の目的には、1)合法性 2)営利性 3)明確性(イミダスにあれば可)が求められます・

✖ 国際協力に関する活動、ではだめで、〇国際協力に関する活動の企画、斡旋及び請負 なら可です。

好ましからざる者を排除できない

以下の文言を入れておかないと、例えば社長の死後放蕩息子に株券が渡ってしまった場合、会社はそれを容認しなければなりません。

当会社は相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡す事を請求する事ができる。

有能者を社外から選抜できない

非公開会社の場合、取締役を社内からのみ選任することを定款に謳っておけば社内の人員に限定できます。ただし、以下の文言をいれておかないと適任者が社外の人間の場合、定款を変更しなければなりません。

当会社の取締役は、当会社の株主から選任する。但し、必要があるときは、株主以外のものから選任することを妨げない。

”金”(きん)がないと定款認証費が高くなる

株式会社の定款を公証役場で認証してもらう時、資本金が100万円未満なら定款認証費は3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、その他の場合は5万円です。この”金”がないと一律5万円払わなくてはなりません。

べからずその5 資本金が1円では誰も信用しない

外国人が会社を設立する場合は、資本金は最低500万円にする事が求められますが(2023年12月時点)日本人なら1円でも会社は作れます。でも、大丈夫でしょうか?法律上はともかく、社会的には信用度は無いと思われます。例えば、銀行では法人口座の開設には応じてくれません。最低でも100万円、できれば300万円ぐらいにしないと本気度を疑われます。

如何でしたでしょうか。何千万、何億という大きな資金で始める会社と違って、一人若しくは少人数で始める場合は、合同会社にせよ株式会社にせよ自分の好きなようにやりたいという気持ちが強いと思います。しかし、会社は社会の公器ですから、従わなければならないルールがありますし、会社に寄せる世間の期待もあります。無理なく、無駄のないスタート・アップをお願いします。

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