コロナが5類に移行され、またインバウンド需要が盛り上がって来ました。ホテルや旅館などで、海外からの宿泊客への接客にnativeの外国人を雇いたいと思うのは当然です。更に、中国語版のホーム・ページを作ってもらう、母国語で観光案内をするサービスを提供する、等々集客の大きな戦力になります。しかし、過去に技・人・国から逸脱した雇用形態があったためでしょう、出入国在留管理庁から技・人・国の在留資格の外国人を雇用する場合のガイドラインとして『ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について』が出ています(在留庁ガイドライン)。その内容をご紹介しながら、許可されたケース、不許可だったケースを見ていきましょう。

技術・人文・国際

資格該当性

技・人・国に求められる資格該当性が要求されます。

1.自然科学又は人文科学の分野に属する技術または知識を必要する場合は、以下のいずれかに該当していることとされています。

大卒以上であること(日本の大学でも外国の大学でも可) ②日本の専修学校を卒業していて、専門士または高度専門士の資格を持つこと ③10年以上の実務
経験があること。

CHECK POINT☞ 大卒の場合は専門性と就業する業務が多少離れていても、『大卒(大学院)』という括りで見てもらえるようです。
しかし、専門学校の場合は厳しいです。例えば美容学校や建築の専門学校の卒業生がホテルや旅館業に就職することは認められません。
また、③の場合は、単に勤務していたというだけではだめで、総支配人であったなど、しかるべき役職でキャリアを積んできた実績が要求されます。

2.外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務に就く場合は、以下のいづれにも該当する事が必要です。

①外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務とは、

翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務服飾もしくは室内装飾に係るデザイン商品開発その他これらに類似する業務です。

CHECK POINT☞ フロント等に受付として外国人を配置する場合ですが、宿泊客のどの位の割合が外国客ですか?
少なくても宿泊客の50%以上は外国人でなければ、外国人雇用の必要性を訴求するのは難しいでしょう。
また、宿泊客の言語と雇用した外国人の母国語との整合性は取れていますか?中国系の宿泊客が多いのに、英語しか話せないフィリピン人は認められません。

業務経験が3年以上ある事。(但し大卒以上で、翻訳、通訳、語学の指導に当たる場合は新卒でも構わない)

外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務であれば、大学卒でなくても3年の業務経験があれば可ですし、その中でも翻訳、通訳、語学の指導に当たる場合は、大卒以上であれば新卒でも可です。
CHECK POINT☞ 注意したいのは、ホテル・旅館で翻訳・通訳の仕事量がどれ位あるかです。

給与水準

同じ業務をした時に日本人が受ける報酬と同額以上の報酬であること、が明示されています。

下記の不許可の例でも出てきますが、未だに外国人だから安く使おうという、心得違いの経営者が散見されるのは残念です。

許可された事例

以下の事例が許可されたものです。学歴要件や職歴要件が満たされています。(大学は多少幅がありますが、専門学校の場合は、専攻と業務がほぼ一致しています。)職歴要件は、経験豊富なマネージャー像が浮かびます。顧客層ですが、外国人宿泊客が大勢いて、外国語の使用が必須である事がイメージできます。担当する業務も外国語を使用するものや企画立案といったものになっています。

本国の大学の観光学科を卒業外国人観光客が多く利用するホテルに月給22万円で雇用された。仕事は、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客担当として、ホテル内の施設案内をする。
日本の大学卒。このホテルは外国人観光客が多い。月給は20万円。集客拡大のため母国の旅行業者との交渉の際、通訳や翻訳の他、日本人従業員に対する外国語指導も担当する。
日本の大学の経済学科を卒業した。月給25万円。集客拡大のための市場調査外国人向けのホームページ制作を担当する。
日本の大学の経営学科を卒業外国人客が多いホテルの総合職(幹部候補生)として採用された。月給30万円。フロント業務やレストランでの研修期間4か月後、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客からの要望対応、宿泊プランの企画立案業務を担当している。
日本の専門学校卒業。ホテルサービスやビジネス実務を専攻。専門士の称号有。外国人の割合が多いホテルにおいて、フロント業務や宿泊プランの企画立案に従事する。
海外のホテル・レストランにおいてマネジメント業務に10年従事した。日本の有名ホテルに月給60万円で雇用された。レストランのコンセプトデザイン、宣伝、広報に係る業務に従事する。

不許可だった事例

該当性が厳格に要求されている事が分かります。単純労働で技・人・国に該当しない業務や、一人分の仕事量が確保されていない、日本人と同程度の給与ではない、業務と専攻学科の関連性が乏しい等です。安易な人の貼り付けではなく、なぜ外国人を採用する必要があるのか、雇った人に一人分の仕事量はあるのか等をよく考えて採用しないと許可されません。

1.日本の経済学部を卒業。主たる業務が、荷物運搬と清掃だったため、技・人・国に該当しないと判断された
2.本国の大学で日本語学科を卒業。日本の旅館で外国人顧客の通訳業務をすると申請した。この旅館の外国人宿泊客の使用言語と申請人の言語が異なっていた。申請人の仕事量が十分であるとはみなされなかった
3.日本の商学部を卒業。新しく設立されたホテルに採用された。業務内容が、駐車誘導、料理の配膳と片付けであったため、、技・人・国に該当しないと判断された
4.日本の法学部を卒業。日本の旅館に月給15万円で採用された。業務はフロントでの外国語を用いた予約対応や外国人宿泊客の旅館内案内業務として申請。同種の業務を行う日本人従業員の月給が20万円であることが分かり不許可にされた。
5.日本の専門学校卒業。服飾でデザイン科を卒業し専門士を持っていた。フロントでの受付業務を行うとして申請した。専攻科目と従事しようとする業務の関連性が認められず不許可
6.日本の専門学校でホテルサービスやビジネス実務を専攻し、専門士を持つ。採用後2年間は実務研修としてレストランの配膳や客室清掃に従事するとされていた。技・人・国に該当しない業務が在留期間の大半を占めることから不許可になった

対策

就労系の在留資格全てにいえる事ですが、申請人本人の資格該当性が充足されていて、外国人を受け入れる企業側も外国人に担当させる業務内容や給与水準などがきちんとしていないと許可はおりません。上記の6つの事例を見てみて、改善点を検討してみます。

まず、技・人・国は、いわゆるホワイト・カラー的業務に与えられる在留資格ですので、現場作業が含まれるものはNGです。

1.の場合は、全て現場作業です。しかし、
✅この申請者は日本の大学を出ていますので、もうワンステップ職域を拡げれば(他の外国人従業員に外国語で指示を行うとか仕事のやり方を指導する、外国人従業員を取りまとめるリーダー業務を担当させる等)特定活動46号で在留許可が下りる可能性があります。☞外国人も企業もハッピー!特定活動46号

2.の場合は、仕事量の不足とミスマッチです。
✅例えば、雇用された外国人が中国人だったとします。この旅館では、中国人の宿泊客が少ないため、今後中国人客の増大を企画して、中国語版のホーム・ページの作成や、中国にある旅行代理店へのプロモーションなどを展開して行く、という様な新しいマーケティングをこの申請人に担当させて仕事量の充足を図れば、技・人・国として考慮してもらえる余地があったのではないか?と思います。

3.の場合も1.と類似しています。せっかく、日本の大卒者を採用したのですから、外国人の視点で考えられる企画業務を担当させれば良かったのではないか?と考えます。

4.は企業側の問題です。
✅経費削減のために、安い賃金で外国人を使おうという考え自体が間違っています。

5.は資格該当性から外れていますので、改善の余地はありません。

6.の場合も企業側の問題です。
✅人材を育成する視点はあったのでしょうか?2年間もの現場実習は長すぎますし、もし、必要があったとしたらその必要性を理由書で訴求した上で、研修計画の全体像を示すべきだったと思います。現場の労働力を安く確保しようという意図が透けて見えますので、まず認められるはずがありませんでした。

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