最近のケースを、皆さんにご紹介して、ご一緒にお考え頂きたいと思います。貴方が経営者だったとします。ケーススタディの様な場合人が雇用出来るかどうかを考えて行きたいと思います。

事例

Aさん(女性、中国籍)は永住権を持っています在日30年超です。埼玉県でC不動産会社を10年程度1人で営んでいます。
妹のBさんは、現在本国にいますが、最近日系企業の商社を定年退職しました。10年以上不動産関係の業務を担当していました。姉と一緒に日本で暮らすことを希望しています。

✅Bさんは、AさんとC不動産を共同経営する事を希望していて、500万円を出資する用意があります。経営・管理ビザの取得が第一希望です。
✅Bさんの根本的な希望は、姉のAさんと一緒に日本で暮らすことなので、経営・管理ビザが取れなくても、中国語の通訳や日本で土地を購入したい中国人の富裕層向けの営業等をする、技・人・国なら何とかなるんではないか?と考えています。

さて、如何でしょうか?Bさんは経営・管理ビザか技・人・国のいずれかを取得して、姉のAさんと日本で暮らして行けるでしょうか?

やっていい活動か?(在留資格該当性はあるか)

Bさんが日本で行おうとしている活動は、日本国内で許されている活動でしょうか。経営・管理ビザに求められる要件は、どの様なものでしょうか。

経営・管理の在留資格

本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当事業の管理に従事する活動

とあります。Bさんは、Aさんとの共同経営者を目指すのですから、問題は無いように思われます。

資格はあるか?(上陸許可基準適合性は満たしているか?)

活動内容はクリアーしました。では、その活動を行うために求められる要件(場合によっては資格)はどの様な内容でしょうか・

経営・管理ビザの上陸許可基準

1.事業所が日本国内にあること
2.経営者または管理者以外に本邦に居住する常勤の職員(日本人や、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者等)が2人以上いる事
3.資本金の額が500万円以上であること(2.か3.どちらかを満たしていれば可)
4.管理者である場合は、事業の経営または管理について3年以上の経験を有していること

1.はクリアーです。3.もBさんは500万円出資すると言っています。

では、Bさんは経営・管理ビザを取れるでしょうか?・・・多分無理だと思います。・・・なぜでしょうか?

必要性に関する疑問

管理者が二人も必要か?

Aさんは、長年一人でC社を切り盛りしてきました。
なぜ、ここに来て急に2人の経営者が必要なのでしょうか?
入管庁はこの点を突いて来ると思います。長年Aさん一人でやって来れた業務をなぜ、今二人に分担しなければならないのか?
例えば、Aさんに部下が数人いて彼らを統制する管理者が必要となって来た、という場合なら説得力があります。しかし、その場合でもBさんは、不動産関係の会社で、少なくても部長職以上の職位でマネジメントを3年以上経験していたでしょうか?
しかも、C社はAさんの個人事業主の様です。複数の社員がいるとは思えません。

C社の規模の問題

更に、C社に今500万円の増資がなぜ必要か?ということも問題にされるでしょう。10年来Aさん一人で切り盛りしてきた会社です。
おそらく、カテゴリー3相当の会社規模ではないでしょうか。
増資は別に悪い事ではないので、Bさんの出資は問題ないでしょう。しかしBさんに経営・管理ビザが下りるかと言うと甚だ疑問です。

どう考えるか

C社の事業内容の見直し

増資により資本金を+500万積み増します。これにより事業規模を拡大します。商圏を拡大しても良いと思いますし、取り扱う事業を多角化しても良いと思います。不動産業でも土地取引に加えて賃貸借業を加える、さらには飲食業にも手を広げる等です。事業計画書を作成する必要がありますし、定款の追加が必要になる場合もあります。

経営者が2人必要な事の説明

なぜ、経営者が2人必要か説得力のある説明が必要です。商圏を拡大する場合、例えば東京・神奈川エリアはAさんが、埼玉・千葉はBさんが分担するとか、営業的な外勤業務と経理・企画と言った内勤業務はBさんが担当するとか言った具合です。今までAさん一人で切り盛りで来ていた事業も、事業の拡大によって手が回らなくなる等です。

Aさんの引退

Aさんは永住権を持っています。C社をBさんに譲るか、経営に直接携わらない名誉職に退いてC社の管理をBさん担えば、経営・管理の管理部門の責任者としての地位が得られます。但し、Bさんの経歴が問題になりますが。

技・人・国の可能性

技・人・国でC社に就職する可能性は、どうでしょうか。Bさんは日系企業の商社に居ました。ホワイトカラー色の業務に就いていましたし、日本語も堪能だと思われます。これなら問題は無いのではないでしょうか?

在留資格該当性

技・人・国の在留資格該当性

・本邦の公私の機関との契約において、
・理学、工学、その他の自然科学の分野、
・もしくは法律学、経済学、社会学その他人文科学の分野に属する技術
・若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動

まず、BさんはAさんと雇用契約を交わし、C社に就職しなければなりません。次に就業する職種が問題です。次の上陸許可基準との整合性が要求されます。

上陸許可基準適合性

技・人・国の上陸許可基準適合性

以下のいずれかに該当することが要求されます。

1.就こうとする職業に関連した分野で大学卒以上であること
2.就こうとする職業に関連した分野で日本の専門学校を出ていて、専門士若しくは高度専門士であること
3.就こうとする職業に関し、10年以上の実務経験があること
4.翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務への従事する時は3年以上の実務経験を有すること
(大学を卒業して、翻訳、通訳、語学の指導に係る業務に従事する場合は3年以上の実務経験が無くても可)

Bさんの経歴が、大卒で中国での日系企業で不動産関係をしていたとしたら、問題は無さそうです。しかし、ここでも必要性の問題が出てきます。ひと一人の仕事量を充足させるだけの作業量があるのか?ということです。経営・管理編でもお分かりの様に、

✅日本に来たい人がいて、その人に見合った仕事を見つけるのではなく、必要な仕事(量)があって仕事に人を当てはめる。これが本筋です。

以下の雇用理由書を見てください。

請人を採用した経緯

■当社は設立以来、お客様と同じ目線でとらえ、エンドユーザー様の幸せを全力で考え続けております。この様なビジョンを実現するに当たり、向上心があり、自ら最新技術や知識を前向きに吸収し、お客様のニーズに柔軟に対応できる人材を確保することは社の業績を左右する大事です。
■設計業務に付き当社の経営理念を実現できる人材の採用活動を懸命にしておりました所、申請人が当社に応募下さいました。
■採用過程において数名の応募者の中でも、申請人のこれまでの能力・施工計画書作成、図面作成等に関する職歴や日本工学院技術専門学校で学んだ豊富で幅広い知識が、当社の求めるものと合致しました

専攻科目と業務内容の整合性

Bさんの学歴は不明です。ただ、今回の場合仮に大学を卒業していなくても、不動産関係で10年以上働いていた様ですので、3.に該当する可能性はあります。(ただし、実務経験での許可はハードルが高いです。学歴要件の方が通り易い傾向にあります。)

必要な業務量

この点は、心もとないです。Aさん一人で賄えていた業務量です。Bさんが入って何をするのでしょうか。2~3時間しかない業務内容では到底許可は下りないでしょう。

どう考えるか?

C社におけるBさんの必要性からのアプローチが王道です。商圏の拡大や事業の多角化を例に挙げてみましたが、業務の深堀の方向性はどうでしょうか?Bさんを営業職として採用し営業活動を活発化させる。中国の富裕層のアテンドに付ける。インターネットの中国語ページを作成する等です。やはり、事業計画の練り直しは必要で、定款への追加条項が必要になるかも知れません。

就労系のビザ取得の場合、まず『仕事』が大原則です。アルバイトに来てもらったらいい人だったので、継続して雇いたいという例をよく聞きます。『人を仕事に貼り付ける』ので本末転倒なのですが、自社の発展性から事業計画を見直せば、道は開けるかも知れません。マーケティングと言うと何か敷居が高く感じられますが、どんな人がお店に来る人か、どんな情報をもとに来店してくれたのか、などを調べてみるとヒントがあるかも知れません。

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