人手不足の解消のために、建設業、農業、介護の現場で外国人のワークフォースが求められています。勤勉さや真面目さが評価される国々の外国人を採用したいのは、企業主ならみな同じです。今回は、既に日本に在留している外国人を直接雇用する場合を想定して、外国人を雇用する時の注意点をご紹介します。

受け入れ企業に求められる基準

企業として法令を遵守している、社会保険料や税金等をきちんと納めている、というのは当然のこととして、これらに加えて外国人を受け入れるための体制が取れているかどうかが問われます。外国人を受け入れたことのない企業では、登録支援機関と契約してその部分を代行してもらう事になります。企業に要求される基準は以下の様です。特定技能には1号と2号がありますが、今回は特定技能1号を雇用する際の注意て点についてご説明します。

受け入れ企業に要求される基準

① 労働、社会保険及び租税に関する法令の遵守
② 1年以内に特定技能外国人が行う業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させていない事(自発的な離職や定年退職等は除く)
③ 1年以内に受入れ機関の責任による行方不明者を発生させていない事
 欠格事由に該当しない事   
・欠格事由:法令違反による罰則を受けた、特定技能外国人への支援不履行、役員等の適    格性を欠く場合、技能実習の認定取り消しを受けた、暴力団員等、保証金等の徴収等
⑤ 5年以内に出国または労働関係法に関する不正行為を行っていない
⑥ 特定技能外国人の活動状況に関する文書を作成し、事務所に備えておくこと
⑦ 支援費用を特定技能外国人に負担させないこと
⑧ 労災保険に関する手続きを適切に行っていること
⑨ 雇用保険を確実に履行できる財産基盤を有している事
⑩ 報酬の支払いを預金口座への振込又は現金支払いの場合は支払いを裏付ける客観的な資料を提出できること
⑪ 外国人を支援する体制があること(登録支援機関に全部委託する場合は不要)
⑫ 産業分野ごとに定める基準に適合していること
⑬ 派遣形態の場合、定められた基準に適合していること(漁業と農業)

このうち⑪の外国人を支援する体制で求められる内容は以下の様です。

(ア)受入れ機関に過去2年間に就労系の在留資格をもって在留する外国人(中長期在留者)の受入れまたは管理を適正に行った実績があり、かつ、役員または職員の中から支援責任者、特定技能外国人が活動する事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること(兼務可)

(イ)過去2年間に就労系の在留資格をもって在留する外国人(中長期在留者)の生活相談業務に業務として従事した経験がある役職員の中から支援責任者及び特定技能外国人が活動する事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること(兼務可)

(ウ)(ア)、(イ)と同等程度に支援業務を適正に実施することが出来るものとして認められること

これが満たせない企業は、この部分を登録支援機関に委託することになります。

登録支援機関

登録支援機関とは

登録支援機関とは、特定所属機関(受入れ企業)からの委託を受け、特定技能1号外国人が、特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うための、在留期間における支援計画の作成、実施を行う機関になります。(※雇用する外国人が熟練した技能を有する特定技能2号については支援計画の作成は必要ありません。※特定技能2号は、令和5年12月現在建設分野及び造船・舶用工業分野の溶接区分のみですが、介護を除いて今後1号の全ての分野に拡大される予定です。)
特定技能外国人を雇用する受入れ企業(団体)は特定技能所属機関と呼ばれます。
特定技能所属機関は、特定技能外国人の職場、日常生活、社会上の支援を行うことが義務付けられています。

登録支援機関の役割

特定技能外国人の支援は、書類作成等で専門的な知識が必要になるケースもあり、雇用主である特定技能所属機関が、自身で支援を行うのが難しいこともあります。
そこで、登録支援機関が、特定技能所属機関に委託される形で、特定技能外国人の支援計画書の作成、実施を代わりに行います。

費用

これは各機関により、まちまちです。契約時にまとまった金額を要求する機関とない機関があります。ランニングコストとして、毎月外国人一人当たり2~3万円位が相場です。

受入れ機関と登録支援機関、雇用される外国人の関係は以下の様になります。

特定技能外国人

第1ステップ 雇用出来るかどうかの確認

本人のパスポートと在留カードを確認することは勿論ですが、以下のことにも注意してください。

雇用しようとする外国人は以下の条件をみたしているか

1. 18歳以上であること
2. 健康状態が良好であること(参考用市区の健康診断個人票に掲げる項目の検診をし、健康診断個人票を提出。健康診断書は在留資格変更申請の時も要求されます。)
3. 特定技能で必要とされる技能を有している事が試験その他の評価方法により証明され    ていること(例;試験ルートで農業なら1号農業技能測定試験の合格証を確認する)
4. 生活に必要な日本語能力及び業務に必要な日本語能力を有している事(日本語検定試験(JLPT)か国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)のN4以上を保有している事の確認)
5. 退去強制令書の円滑な執行に協力しない国・地域の外国人ではないこと
6. 特定技能1号での通算在留歴が5年に達していないこと(特定技能1号で在留中に再入国許可(みなし再入国を含む)を受けて出国していた期間も、通算在留期間に含まれる)

3.でいう試験ルートかその他の評価方法によるか、とは以下の図の様です。技能実習2号を修了していれば、技能試験や日本語試験は免除されます。

特定技能1号

第2ステップ 特定技能外国人と雇用契約を結ぶ

雇用しようとする外国人が、雇用出来れば雇用契約を結びますが、契約書は以下の条件を満たしていなければなりません。

特定技能1号外国人との雇用契約書に盛り込むべき内容

1.分野省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること
2.所定労働時間が,同じ受入れ機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間 と同等であること 
3.報酬額は日本人が従事する場合の額と同等以上であること 
4.外国人であることを理由として,報酬の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の 利用その他の待遇に ついて,差別的な取扱いをしていないこと 
5. 一時帰国を希望した場合,休暇を取得させるものとしていること
6.労働者派遣の対象とする場合は,派遣先や派遣期間が定められていること
7.外国人が帰国旅費を負担できないときは,受入れ機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること 
8.受入れ機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることとしていること 
9.分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)

第3ステップ 特定技能外国人の支援計画を策定する

今回の記事は、受け入れ機関が登録支援機関に業務を委託することを前提にしています。個々の内容は、登録支援機関に任せるとしても雇用主側もどのような項目があるかは知っておいていただきたいと思います。

支援計画の内容

1. 外国人に対する入国前の事前ガイダンスの提供
2. 入国時の空港等への出迎え及び帰国時の空港等への見送り
3. 適切な住居の確保に係る支援
4. 生活に必要な契約に係る支援(銀行口座、携帯電話、その他のライフライン)
5. 在留中の日常に必要な情報の提供(生活オリエンテーション)
6. 行政機関への届け出等への同行等
7. 生活に必要な日本語学習の機会提供
8. 外国人からの相談・苦情への対応
9. 日本人との交流の促進に係る支援
10.特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援
11.定期的(3か月に1回以上)な面談と行政機関への通報について

1.5.8.11.は特定技能外国人が十分に理解できる言語で行う必要があります。11. は対面で行わなければなりません。このため、各支援機関も対応できる言語を明記しています。ベトナム人を雇うのにベトナム語に対応できない支援機関とは契約できません。

以上のステップを踏んで、出入国在留管理庁に在留資格変更許可の申請をします。

送り出し国での必要手続きの踏襲

日本に在留している外国人を直接雇用する場合、外国人の出身国によっては、送り出し国の事前手続きが必要な国もあります。代表的な例を挙げておきます。

・フィリピン:POLO(フィリピン海外労働事務所)を通じて受入れ機関をPOEA(フィリピン海外雇用庁)に登録し、その外国人が海外雇用許可証を取得しておく必要がある。海外雇用許可証が無いと帰国後日本に戻れない事がある。

・インドネシア:特定技能外国人が、在留資格変更申請前に、海外労働者管理システム(SISKOTKLN)に登録する。

・ネパール:特定技能の在留資格で在留中に一時帰国した際に、ネパールで海外労働許可証を取得する必要がある。

・タイ:雇用契約の認証を受ける必要がある。 入社後、在日タイ王国大使館労働担当官事務所に報告書提出

いかがでしたでしょうか?外国人を雇用する際の注意点をご紹介してきました。今は、多くの業界の現業現場に外国人労働者が一定数います。彼らの力がないと成り立たない現場すらあります。人件費の節約のために、安い労働力と目されていたのはもう遠い過去の話です。外国人の人権を守り法令順守の元で、自社の発展を考えて頂きたいと思います。

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