永住許可を申請する際、在留期間が10年に満たなくても、、日本人や永住者の配偶者等や定住者あるいは高度人材には、特例が設けられていることはご承知の通りですが、この他にも大学教授や日本企業で働く管理職にも優遇措置が用意されています。該当する方は、是非ご一読下さい。
目次
日本への貢献があること
原則10年在留に関する特例について、在留管理庁のガイドラインには、
●外交、社会、経済、文化の分野において日本国への貢献があると認められる者で、
●5年以上日本に在留していること
となっています。
このガイドラインの中には、外交分野からスポーツに至る迄、8つの類型があるのですが、ノーベル賞の受賞であったりオリンピックの上位入賞者等少しかけ離れたものもありますので、卑近な類型として教育と企業勤務の例を見てみたいと思います。
教育分野
教育分野で、特例をうけるには以下の様な条件になっています。
■学校教育法に定める日本の大学又はこれに準じる機関の常勤又はこれと同等の勤務実態を有する教授、准教授又は講師として、日本で概ね
3年以上教育活動に従事している者。
■またはかつて日本で概ね3年以上これらの職務に従事したことのある者で
■日本の高等教育の水準の向上に貢献のあった者。
①大学の常勤の教授、准教授、講師であること、②3年以上勤務していること、③日本の教育水準の向上に貢献していること
が条件です。①と②は明確です。来日して5年教授か准教授で教鞭をとっていればクリアー出来ます。③は具体的にどのようなものなんでしょうか?
高等教育水準への貢献として認められた例
許可された例と不許可であった例を比べてみますと、許可された例では
✅ 大学の助教授で科学技術研究者として実績があった。多数の科学技術誌への研究論文の掲載の他,各種学会,研究グループの指導等を行い,我が国の産業,教育等の分野に貢献があると認められた。
✔この太字の部分が③の日本の教育水準の向上に貢献した、と認められた部分です。論文を書いて広く知識を流布させた、後輩を育成した、という点が日本の科学水準の向上に貢献したと評価されました。
✅ 我が国の大学助手として4年以上勤務しており,高等教育活動に従事しているほか,派遣研究員として第三国で研究活動を行う等,研究面においても一定の評価があることから,我が国の学術分野において貢献が認められた。
✔この場合は、第三国で行っていた研究活動が評価されていて(有名な賞を受賞した等)その研究成果を日本にフィードバックした等で日本への貢献が評価されたものと推察されます。
✅我が国の大学の常勤講師として3年以上勤務しており,我が国の高等教育(外国語)の水準の向上に貢献が認められた(通算在留歴8年1月)。
✔この場合の貢献は、どの様なものでしょうか?NHK教育の外国語講座の講師を長年務めた等が考えられます。
✅ 我が国の大学助教授として5年以上勤務しており,高等教育(外国語)の水準の向上に寄与しているほか,大学入試センター試験等各種教育活動に参画していることなどから,我が国の教育分野において貢献が認められた(在留歴7年2月)。
✔これは分かり易いです。センター試験という国の事業に協力しています。
この他にも多くの例がありますが、概ね以下の様な傾向が見て取れます。
● 大学で教鞭をとっていることのみの申請の場合は、かなりの長期間の実績が必要。
● 論文の発表や研究成果に対する評価(受賞等)など個人に対する外部の客観的な評価。
● 国の施策等への参加や協力
大学教授が有する高度な知識をいかに日本に伝える努力をしたか、大学で教鞭をとる以外にもいかに人材育成に尽力したか、という部分が日本の教育水準の向上への貢献として評価されています。
高等教育水準への貢献として認められなかった例
以下は、認められなかった例です。
✅ 語学指導助手として入国し,3年間は本邦内の中学校で,それ以降は高等学校において約4年間英語教育に従事していたが,日本の大学又はこれに準ずる機関の常勤又はこれと同等の勤務の実体を有する教授,助教授又は講師としては認められず,高等教育の水準の向上に貢献のあった者とは認められなかった。(在留歴6年11月)
✔ 大学でないと認められません。
✅約1年間,高校で教師をしている他,通訳等のボランティア活動を行っているとして申請があったが,当該活動のみをもって社会的貢献等には当たらないとして不許可となった。
✔ これも同様で大学でない点がネックでした。更にボランティア活動も地域社会への貢献という点では評価されると思いますが、広く日本への貢献という点では、視野が狭いですし、個人への客観的評価という点でも難しいと感じます。
経済・産業分野
この分野では6類型が紹介されていますが、企業勤務に関連するもののみ3類型についてご紹介します。
1. 日本の上場企業又はこれと同程度の規模を有する日本国内の企業の経営におおむね3年以上従事している者又はかつてこれらの企業の経営におおむね3年以上従事したことがある者で,その間の活動により我が国の経済又は産業の発展に貢献のあった者
2. 日本国内の企業の経営におおむね3年以上従事したことがある者で,その間に継続して1億円以上の投資を行うことにより我が国の経済又は産業の発展に貢献のあった者
✔1.や3と比べて2.は分かり易いです。例えば、経営・管理の在留資格で飲食店を経営し、店舗数を拡大する様な場合数千万円づつで投資をすれば、1億円の基準に達します。腕に自信のある調理人出身者で成功している人が多いです。
3. 日本の上場企業又はこれと同程度の規模を有する日本国内の企業の管理職又はこれに準ずる職務におおむね5年以上従事している者で,その間の活動により我が国の経済又は産業の発展に貢献のあった者
経済・産業の発展への貢献として認められた例
日本経済・産業の発展への貢献の尺度は、教育の場合と同じでやはり受賞や表彰等の個人の能力に対する客観的な事実です。
✅ 本邦内の会社員として勤務しながら,電気学会において多数の論文を発表し,学術雑誌等において表彰され,権威ある賞を受賞していることから,研究分野での貢献が認められた。(在留歴10年4月,就労資格変更後4年3月)
✔ バロメーター的に文句なしです。論文発表により高度な知識を日本に流布し、表彰によって認知された上で、権威ある賞の受賞で社会的に評価されています。
✅ 本邦内の自動車生産会社に勤務し,粉末冶金関係の論文を多数発表し,日本金属学会誌等に多数掲載されているほか,権威ある協会から表彰されており,産業の発展及び研究分野における貢献が認められた。(在留歴8年6月)
✔ 上と同じパターンです。論文を多く発表し、発表した論文が評価され、受賞している。
● 経済・産業の分野でも教育の分野と同じで、『貢献』への尺度は客観的な外部の評価です。個人的に能力がある事を積極的に発信し、その有能さが社会的に認知されなければ、貢献したとはみなされません。
経済・産業の発展への貢献として認められなかった例
✅ 本邦で起業し,当該法人の経営を行っているが,その投資額,利益額等の業績からは顕著なものであるとはいえず,我が国経済又は産業に貢献があるとは認められず,不許可となった。
✔ これは、パターン2の例ですが、投資額が1億円に満たなかったということではないでしょうか。
✅ 投資関連企業の課長相当職にある人物であるが,当該勤務のみをもって我が国経済に貢献があるとは認められず,他に貢献に該当する事項もないことから不許可となった。
✔ 課長職である、部長職であると言うだけでは不十分だとはっきり言っています。投資関連企業だと、論文発表→認知→受賞 のパターンに当てはまるのは何でしょうか? 人文系の分野だと科学技術の分野と異なり、公共への福祉(皆さんの役に立つ事)を紙面に著す事はなかなか難しいのではないでしょうか?この様な場合のアプローチとしては、10年間待つか、高度人材へトライする方が早いと思います。
以上大学教授や企業の管理職に対する永住申請時における居住期間に関する優遇措置を見てきました。大学教授である、管理職であると言うだけでは優遇措置は受けられません。日本の教育界や経済・産業界への『貢献』が求められます。論文等を発表して表彰されたりや受賞する等
貢献度を形にすることが求められます。
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