オーバーステイのまま何年も過ぎてしまったり、適正ではないパスポートで入国してしまって随分過ぎてしまった。このままでいるかそれとも今までを清算してやり直すか?この時一番の心配事は、日本に居続けられるかどうかということでしょう。何年も日本にいれば、結婚して子供がいる場合もあるでしょう。入管に行くにはもの凄く勇気が必要です。この様な場合に与えられる可能性のある在留特別許可は、法務大臣の裁量により決定されるもので、個々のケースにより結果が異なります。明確ににこれはOKこれはNGということを、行政書士の立場からは言えませんが、入管庁からのガイドラインを元に在留特別許可が裁定される際の積極要素(ポジティヴに考えてもらえる点)と消極要素(ネガティヴに考えられる点)をご紹介します。

在留特別許可までのプロセス

在留特別許可は、どうやったら取れますか?とか申請はどうすればいいですか?という質問を時々受けますが、在留特別許可とは法務大臣が人道的見地からその裁量によって下すもので、申請書というものはありません。上のフロー図だと、特別審理官が該当者を『退去強制対象者』と認定したことに誤りなしと断じた後、判定通知書が発行されます。その中に、『判定に不服がある時は、3日以内に法務大臣に異議を申し出ることができる。』とあるだけです。この結果、法務大臣に在留を特別に認められた場合を在留特別許可と呼んでいます。

積極的要素

入管法による定め

まず、入管法(出入国管理及び難民認定法)50条に法務大臣は以下の者に在留を特別に許可することが出来る、と定めています。(”しなければならない”のではないので、該当者が全て救済されるわけではない点に注意してください。)

1.永住者
2.かつて日本国民として日本国籍を有したことがある者
3.人身取引等により他人の支配下に置かれて日本に在留するもの
4.その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認める時

積極要素 (入管庁の在留特別許可に係るガイドラインから)

特に考慮する積極要素

以下の(1)から(4)までのキーワードは、法的に正式な結婚をしていることと、実子がいて扶養していることです。(5)は日本でしか治療できない程の病気にかかっている。家族は引き離せない、あるいは命に関わるという人道的な見地からの措置になっています。

(1)日本人の子又は特別永住者の子である
(2)日本人又は特別永住者との間に生まれた実子(嫡出子又は父 から認知を受けた非嫡出子)を扶養していて、①その子未成年未婚で、かつ②その子の親権を持っていて、しかも③その子を現在も日本国内で相当期間同居の上,監護及び養育している
(3)日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合(退 去強制を免れるために,婚姻を仮装し,又は形式的な婚姻届を提出した場合を 除く。)であって,
 ① 夫婦として相当期間共同生活をし,相互に助け合っていて生活していて
 ② 夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること
(4)日本の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている 教育機関を除く。)に在学し相当期間日本に在住している実子と同居し,実子を監護及び養育していること
(5)難病等により本邦での治療を必要としていること,又はこの ような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること

その他の積極要素

この部分では、1.自ら出頭していること、2.永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者と正式に婚姻している(結婚期間が長く子供もいる)、3.永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者の実子を扶養している (未婚で未成年の子の親権を持っていて、同居している)4.永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者の未成年で未婚の実子である 5.日本に長期間いて日本に根ずいている 6.その他があげられています。

(1)不法滞在者であることを申告するため,自ら地方入国管理官 署に出頭したこと
(2)永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者の在留資格で在留している者との婚 姻が法的に成立している場合であって,特に考慮する積極要素の(3)の①及び②に当てはまること 
(3)永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者の在留資格で在留している実子(嫡出子又は 父から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって,特に考慮する積極要素の(2) の①から③のいずれにも当てはまること
(4)永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者の在留資格で在留している者扶養を受けている未成年・未婚の実子であること
(5)日本での滞在期間が長期間に及び,日本への定着性が認められること
(6)その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること

消極要素

特に考慮する消極要素

特に重大とみられる犯罪は、殺人や強盗、放火等の凶悪・重大犯罪、麻薬、拳銃、不法就労助長罪、偽造旅券、売春等です。

(1)重大犯罪等により刑に処せられたことがあること
     <例> ・ 凶悪・重大犯罪により実刑に処せられたことがあること
    ・ 違法薬物及びけん銃等,いわゆる社会悪物品の密輸入売買により刑 に処せられたことが
    あること
(2)出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること
     <例> ・ 不法就労助長罪集団密航に係る罪旅券等の不正受交付等の罪などにより刑に処せら
    れたことがあること
            ・ 不法・偽装滞在の助長に関する罪により刑に処せられたことがあること
            ・ 自ら売春を行い,あるいは他人に売春を行わせる等,本邦の社会秩序 を著しく乱す行為を
    行ったことがある こと
            ・ 人身取引等,人権を著しく侵害する行為を行ったことがあること

その他の消極要素

(1)船舶による密航,若しくは偽造旅券等又は在留資格を偽装して不正に入国したこと
(2)過去に退去強制手続を受けたことがあること
(3)その他の刑罰法令違反又はこれに準ずる素行不良が認められること
(4)その他在留状況に問題があること
   <例> ・ 犯罪組織の構成員であること

在留特別許可の許否判断

ガイドラインでは、最終判断をどのように決定するかについて以下の様に説明しています。ただ、特に考慮する消極事項に抵触した場合はかなりのマイナス要因になると思っておいた方がいいです。

在留特別許可の許否判断は,上記の積極要素及び消極要素として掲げている 各事項について,それぞれ個別に評価し,考慮すべき程度を勘案した上積極 要素として考慮すべき事情が明らかに消極要素として考慮すべき事情を上回る 場合には在留特別許可の方向で検討することとなる。したがって,単に,積 極要素が一つ存在するからといって在留特別許可の方向で検討されるというも のではなく,また,逆に,消極要素が一つ存在するから一切在留特別許可が検 討されないというものでもない。

出入国管理庁『在留特別許可に係るガイドライン(令和6年3月改訂版)』

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